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「つまり、犯人は煙のように消え失せてしまった」 それからにんまりと笑う。 磯崎は頷いた。 「そのとおりです。直前まで追い詰めておきながら、とりのがしたっていうことで、俺の首が……」 「あんたの進退はどうでもいいが」 車六は先ほどと同じセリフを続けて 「中々美味しそうな不可能犯罪を持ってきてくれたことには感謝しよう」 そういって、乾杯とコーヒーを差し出してくる車六。 磯崎はそれを無視して 「それで……解けそうですか?」 行き場を失ったコーヒーにちょっと戸惑った車六。 それでも渋々といった様子でコーヒーで口を濡らすと 「もちろんだ。俺に解けない不可能犯罪はない」 そう力強く断言してみせた。 それから髪の毛をぼさぼさとかいて 「さあ、検討していこうか」 プレゼントをもらったばかりの子供のようにワクワクしている。 磯崎は一抹の不安を覚えながらも、こくりと頷いた。 なんにせよ、自分の進退はこの男にかかっているのだ。 ※※※※※※※※ それからは、討議に次ぐ討議だった。 車六が何か思いついては、磯崎がつっこみ。 可能性を思いついては、それを二人で次々と否定していく。 「一番ありそうなのは」 そう唇をゆがめて車六が言う。 「あんたが最初に聞いた目撃者の男が、道を見間違えたという可能性だ」     
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