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「それは考えられません」
「何故だ?他の2つの道は行き止まりでもなんでもないんだろう?あんたが真ん中の道でてんてこまいしている隙に、他の2つのいずれかに逃げ延びていた犯人はそのまますたこらと消え去ったというわけだ」
「目撃証言がその男のものだけなら」
磯崎は唇をしめらせた
「確かに見間違えたということも考えられるでしょう。だけど、真ん中の道路には飲食店が軒を連ねていて、そこの主人達は全員全速力で走っていくカボチャを目撃しているんですよ」
「なるほど。複数の証言からして、犯人が真ん中の道路に入り込んだのは間違いないと」
「そうです」
磯崎は悔しげに頷いた。
車六は嬉しそうに揉み手をして
「とすると、別の可能性を考えなきゃならんな」
「別の可能性?」
「例えば」
車六は膝を乗り出して
「犯人は行き止まりになっていた三方の壁のうち、いずれか一つを伝って逃げた。これなら、あんたがそこにたどり着いた時には犯人が失せていた説明になるだろう」
「なりません」
「おや?どうして?」
自説が否定されたというのに車六は楽しそうだ。
不可能犯罪を論ずること自体が興奮を与えてくれているのだろう。
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