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曰く、道中の飲食店の一つに逃げ込んだ。 曰く、目撃者は全員何らかの理由で嘘をついており、やはり犯人は真ん中の道路に入り込んでいない。 曰く、犯人はドローンを所持しており、それに仮装した道具を軒並み取り付け、真ん中の道路に入り込ませた。つまり、磯崎が追っていたのは実態のある人間でなく、空を飛んで逃げるのも自由なドローンだった。 突飛な発想のオンパレードだ。 悲しいかな、磯崎に身に付いた警察官としての常識が、それらを否定せざるをえない。 曰く、飲食店の一つに逃げ込んだなら店主が目撃しているはずである。 曰く、一人や二人なら警察官が嫌いであるなどの理由で偽証することも考えられるだろうが複数人にものぼる目撃者全員が示し合わせたわけでもなく同じ嘘をつくとは考えられない。 曰く、磯崎の目がどんなに悪くとも、目撃者達の視線がどんなに狂っていようと、四肢を使ってしっかりと地面を蹴っていた犯人の姿をドローンと間違えることなど考えられない。 次から次へと論破したくもないのに論破してしまう磯崎。 どんどん論破されているにも関わらず一向に構わず、むしろ嬉しそうな車六。 彼らの会話は数時間にも及んだ。     
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