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ごちゃごちゃしているはずなのに、しんと静まりかえったそこには不思議と居心地の良さが感じられてきた。 単に磯崎の目が慣れただけかもしれないが。 壁に掛けられた時計。その針が確実に時を刻んでいく。 やがて。 その瞬間はやって来た。 「ふう……」 車六が息を吐く。 集中していた思考から開放されたかのようだ。 磯崎は慌てて 「何か分かったんですか?」 「まあ待て」そういってコーヒーを口に含む車六。 ゆっくりと味わうようにしながら飲み込む。 それから口を開いた 「分かったよ。全て」 ぐぐっと伸びをして 「中々面白い事件だった」 満足そうにあくびをした。 随分とのんきな対応に、磯崎の心はいっそう急く。 「それで、それで真相は?」 「まあ、簡単なことだ」 車六はとっておきのデザートを味わうかのように舌なめずりしながら 「犯人は最初にあんたが尋ねた青年だ。そいつはあんたが見逃した隙をついて急いで仮装を解いて、別人のふりをしたんだ。それから人ごみに紛れ、あんたに腕を捕まれると、三つある道路の内真ん中に犯人が逃げていったと嘘をついた。本当はその道に逃げてなんていないんだから、見つからなくても不思議じゃない」 何でもないことのように言う車六。 その長い手足を組むと口角を吊り上げて 「これが真相だ」 「えっ……いや、でも」 磯崎は反芻する。     
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