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車六は尚もニヤニヤと笑う。
彼は言った。
「気づいたようだな」
「気づいたもなにも……いや、でも、そんなまさか」
そんな馬鹿げたこと。
「あらゆる可能性を消去していって残った仮説は、例えどんなにそれがありそうにないことでも、それが真実なんだ」
ホームズの台詞を引用した車六は満足そうに
「目撃者達は、ただ走っていくカボチャのコスプレ野郎を目にしただけだ」
ゆっくりと、真相を告げる。
「つまり」
びしっと再び指差す車六。
「飲食店の主人達は、あんたを目撃したんだ。あんたは追っているつもりで、逃げていく犯人の様を目撃させてしまったんだよ」
※※※※※※※※※※※※※※※※
改めて言われても、信じられなかった。
そんな馬鹿な……馬鹿なことが。
「でも真実だ」
心の中を見透かしたように車六が言う。
いや、でも……
「それなら、もし俺を目撃したのだったら、主人達はそう言ってもよさそうなものじゃないか。詰問された時に、逃げていく犯人じゃなく、あなたを目撃しました、と」
車六は首を振って
「それは無理な相談だ」
「なんで無理だって……」
「自分の服装を思いかえしてみな。あんた、事件の調査をする時には、もう仮装を脱いでしまって、警官の制服を来ていたんだろう?」
「あっ……」
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