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指摘された磯崎は思わず叫ぶ。 「ミステリでよく使われる手に、一人二役というのがある。一人の人物が二人になりすまし、それぞれの姿を目撃させておいて、もう一方の変装を解いてしまう。すると、人一人消えたように見える」 車六は重々しく頷いて 「あんたはそれを、一人二役トリックを、期せずして使ってしまったんだ。追うカボチャの姿と、尋問をする警官の姿と」 「さらに」と車六は続けて 「あんたは実際の犯人と同じような格好をしていた。そのことが混乱に拍車をかけた。まさか自分の姿を報告されてるとは思わないから、あんたは追っていく自分のカボチャコスプレを、犯人のものだと勘違いしたんだ」 犯人がついた嘘。 同じような二人の仮装。 そして着替えてしまった自分。 全てのピースがはまっていく。 不可解な消失事件だったものが、氷解していく。 後に残るのは、間抜けな自分の姿だけ。 「そんな、そんな馬鹿な……」 「まあ、気をおとさんことだ。」 車六はニヤニヤと笑った。 「杜撰な、群衆の中での殺人だ。消失の謎が解けた今、簡単に犯人は掴まるだろうよ」 「それは……」 果たしてそうだろうか。 はたして捕まったところで、自分がしでかした間抜けなミスは取り消されないのではないか。     
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