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たこ焼きやお好み焼き、焼きそば、鶏皮餃子。屋台の時期になると決まってそれらが夕飯として卓上に並ぶ。特にたこ焼きは製作過程を見るのが楽しくて、よく屋台の前に張り付いて眺めていた。
たこ焼き用の鉄板に生地を流し込む。そこにタコと他の具材を入れて、金属の棒でクルクルと生地を少し動かしていく。さらに生地を流し込んで、棒を使って器用に丸い形に整えていく。
何度見ても飽きなかった。クルクルと器用に動く棒と、鉄板の上で次々と焼き上がるたこ焼きに、いつだって目を輝かせた。将来はたこ焼きの屋台をやる、なんてことを思った日もあったな。
「いらっしゃいいらっしゃい!」
「美味しいたこ焼きはいかがですか?」
あぁ、今日も毎年のように通っていた屋台ではたこ焼きが売っている。行列の先にある屋台で、ハチマキを巻いたおっちゃんがクルクルと棒を動かしてたこ焼きを造っている。
「うわーっ! すっごい! たこ焼きってこうやって作るんだ!」
屋台の前には、いつかの僕のようにたこ焼きの製作過程を夢中になって見ている子供がいた。この子は大きくなったら何になるんだろう。きっと僕のいなくなった町が、この子の成長を見守ってくれるはずだ。
子供の邪魔をしないように店主に声をかけて、たこ焼きを購入する。お金を渡すと、店員が棒を巧みに操ってフードパックの中にたこ焼きを詰めていく。子供は昔の僕のように、たこ焼きが詰められていく様をキラキラした眼差しで見つめていた。
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