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FBIとCIAのプロファイルを覆すほどの天才……もし彼が気まぐれに嘘を吐いたなら、無実の人間が容易に犯罪者として処断される筈だ。誰も疑わないくらい完璧な嘘を築き上げるだけの知識も、狡さも、経験も持ち合わせているのだ。
「簡単だ。俺は二度とお前に会うことなく死刑になる」
意味ありげに口元を少し笑みに歪める。まるで己の言葉通りになることを歓迎するような態度に、ロビンは立ち上がって大げさに嘆く仕草を見せた。
頭を抱えて、劇役者のようにがくりと俯く。
「なんてことだ……『稀有なる羊』を天に返す? それは社会の損失だ。偉大なる損失だよ…死神を野に放ち、獣たちは怯える羊を狩るだろう。地獄を呼び寄せる引鉄となり、永遠が終わりを告げる」
「ならば、どうする?」
楽しそうな顔を見せたコウキの口調に誘われるように、ロビンは再び椅子に戻ったが腰掛けず、椅子の背に手を置いて後ろに立った。一礼して上目遣いにコウキを見上げる。
「我が『最愛の羊の無実』は、地上の死神が証明してみせよう。無慈悲な天上の神ではなく……死神にしか解けない謎を」
資料を掲げたコウキに対し「持ち帰って構わない」と頷いた男が踵を返す。背で揺れる三つ編みが本日の会話の終了を告げた。
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