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「稀有なる羊…ここは快適だろう?」
「……快適?」
ありえないと皮肉を込めたコウキの鸚鵡返しに、稀代の天才は軽く肩を竦めてみせた。
まるで子供の意地悪を受け止める親のような余裕を覗かせる。長い三つ編みの穂先を指先でくるりと回して、彼は満面の笑みを作った。
「こちら側にくれば分かる」
二人の間を遮る鉄格子は、鈍い光で存在を主張する。連続殺人犯として世間をにぎわせた彼のいう『こちら側』は、犯罪者として人間の倫理を越えた先の話だと察するのは簡単だった。
「生憎、その予定はない」
取り付く島のない冷たい対応にも、機嫌のよいロビンは笑みを崩さない。
「助けてくれない『全知全能なる神』とやらに祈ってみるか? 偉大なるヤハウェが、聞き届けてくださるかも知れない」
気まぐれにでも……。
続けられた単語は声にされず、唇の動きとロビンの表情から読み取った。
彼は神の存在を否定するその口で、イエス・キリストや神が遺した言葉を諳んじる。
知っているからこそ神を愚弄するのか。
いや…理解できないから拒否したのだろうか。
神を讃えるように丁寧な言葉を使うくせに、平然と悪魔以下の存在だと罵る。
「……思ってもいないことを」
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