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03.秘されない情報
「久し振りだね、稀有なる羊」
シリアルキラーは優雅に一礼してみせた。
用意された椅子に無言で腰掛けるコウキの不機嫌さを、好ましい態度だと言わんばかりに受け止めたロビンが三つ編みの先をくるり指で回す。
コツコツと靴音を響かせて歩き、向かい合わせに位置する椅子を引き寄せて座った。
間には無粋な鉄格子――変わらぬ風景だ。
ブラウンの長い三つ編みの先を弄りながら、ロビンは口角を引き上げて笑みを作った。
「今回の事件はコウキ絡みと聞いたが?」
「……白々しい」
先ほどまでの尋問を引き摺るコウキの吐き捨てた言葉に、ロビンは軽く肩を竦めて大げさにジェスチャーする。何も関係ないのだと訴えるように両手の平を上に向けて。
「オレが関わっているとでも? 残念だがそれはない」
言い切ったロビンがまっすぐに視線を合わせてくる。青紫の瞳は珍しい色で、薄暗くなった室内で陰りを帯びて紫藍に染まっていた。
なんとなく己の態度が大人気なく思われ、コウキはひとつ大きく息を吐き出す。深呼吸すれば、冷静さを取り戻した頭が働きだした。
「誰が事件のことを?」
まだ数時間前の話だ。FBIの中でも状況を知っている人間は両手に足りる。
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