【 若さゆえ 】

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 カップルとしての初デート。  是が非でも成功させたい。  夏嫌いという彼女の意外な一面を目の当たりにし若干動揺しているが、俺はユリカの全てを丸ごと愛す。  フォークに刺したイチゴで大量の生クリームをすくい上げ嬉しそうに口に運ぶユリカの姿に安堵し、逆に質問してみた。 「ちなみに、冬のどんなところが好きなの?」  すると、愚問だと言わんばかりの勢いで「だって夏は暑いじゃない!凄い汗かくし!夏は地獄よ!冬の方が断然好き!」  夏への不満をにじませた時の彼女の鼻息は荒い。  俺は大胆に大きく切り分けたフワフワのパンケーキを口いっぱい頬張りアイスコーヒーで一気に流し込むと、軽く深呼吸をして空を見上げた。  相変わらず嫌な曇り空……  今にも降り出しそうな不穏な空気が、俺の心情とリンクしているような気がして、たまらない……  ジーザス!  冬の好きなところ!!  聞かせてくれよっ!!!  思わず叫びそうになった。  夏を嫌う者たちが愛して止まない季節が、もうすぐ訪れる。  俺は寒いのが大嫌いで、彼女はその事をまだ知らない。
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