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二話 『あなただけの新聞』
ピンポーンという軽快なノイズが、夜遅くまで作業を強いられた俺の睡眠を妨げ、近くにあった目覚まし時計に睨みを利かせてみると、時刻は午前9時。
非常識すぎるとまでは言わないが、人を尋ねるにはそこそこには常識不足な時間。
無視を決め込むことは簡単だったが、なんとなく嫌な予感がした俺は寝ぼけ半分な頭のまま玄関に近づきドアスコープを覗き込んだ。
ドアの向こうにはピシっとしたスーツ姿の30代くらいの男が見える。
十中八九、訪問販売の飛び込み営業であろう。
俺は居留守を決め込み、音を立てずにベットへと引き返そうとしたが、不注意にも玄関の段差に足をぶつけてしまった。
ドン!
静まり返った玄関に鈍い音が響き、それと同時に扉の前の男がニヤリと笑った気がした。
「ごめんください」
まるで今の音が聞こえたぞと言わんばかりの大きな声である。
『チッ・・・』
こうなってしまってはさすがに居留守は通用しないだろう。
俺は小さく舌打ちしてから玄関の扉を少しだけ開けた。
「なんですか・・・?」
もちろんできる限り嫌そうな表情を浮かべることも忘れない。
「おはようございます。もしかしてお休み中でしたか?」
「ええ。まぁ・・・」
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