二話 『あなただけの新聞』

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「そうでしたか。それは、大変申し訳ございません。実は私こういう者でして・・・」 果たして本当に申し訳ないと思っているかは甚だ怪しかったが、手渡された名刺には『株式会社 善意』という何とも奇妙な社名が書いてあった。 「株式会社・・・、ぜんいであってますか?」 「ええ。そう読みます。実は当社は新聞を扱っておりまして、この辺でご入用な方がいらっしゃらないかと探しているんです」 「はぁ、つまり勧誘ですか・・・。申し訳ないですけど新聞ならもう取ってるんで、勧誘なら他を当たってください」 俺はそのまま扉を閉めようとすると、途中で何かに突っかかり、なんだろうと視線を下げた先には、ピカピカの革靴が扉の間に挟まっていた。 「ちょっと、足引いてもらえますか?」 俺は少し語気を荒げた。 「これは、すいません。ただ、一つお尋ねしたいのですが、本当に新聞を取っていらっしゃいますか?」 「はい?何言ってんすか?取ってますよ」 もちろん嘘だが、相手には確認のしようもない。 「では、おかしいですね・・・」 「・・・何がですか?」 「レターボックスの中には新聞が入っていません。今が朝の9時だというのに」 男は扉の隙間から手を入れてレターボックスを指さした。 「・・・もう読んで捨てたんですよ」 「捨てた・・・?」 「そうですよ」     
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