二話 『あなただけの新聞』

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「先ほどはお休み中だったと仰っていませんでした?」 「ちっ・・・」 問答が面倒になった俺は力ずくで扉を閉めようと両手で思いっきり戸を引いたが、 どこにそんな力があるのかのか男は簡単に片手で受け止めた。 「一月、いや一週間でも構いませんので・・・。新聞をとってもらえませんか?」 「悪いけど、政治にも経済にも興味ないんでね!」 何度も扉に力を加えるがビクともしない。 「問題ありません。当社が扱う新聞にはそういった類のものは一切含まれておりませんので・・・」 「はぁ?それ新聞て言えるんすか?」 「ええ。新聞ですよ。当社が扱うのはあなたの為だけの新聞です ・・・ 「いいお部屋ですね」 結局、根負けしたのは俺の方だった。 「はぁ・・・。ただの賃貸ですよ」 「いえ。そういうことではなくてですね、部屋の趣味が私好みなんです。何か楽器をやっていませんか?」 「・・・ギター弾きますけど、何でわかったんですか?」 確かに押入れにはギターが三台あったが、普段からその辺にほっぽり出しているわけでもないし、アンプやピックも綺麗に昨日のうちに綺麗に片付けてある。 「ステレオにお金がかかっています。私もそうなんです。専ら鍵盤を叩くことが専門ですけれども」     
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