二話 『あなただけの新聞』

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男はそう言って机を鍵盤代わりに引くような仕草をしてみせたが、今朝のことといい恐ろしいほどの観察眼の持ち主だと俺は警戒した。 「それで?あなただけの新聞てのは何なんですか?」 「そうですね。お時間をかけるのも忍びないので、早足に説明させていただきます。あなただけの新聞とはおそらくご想像頂いている通り、ご契約者ご本人様にとって興味のある内容だけを抜粋した新しいタイプの新聞になります」 「内容も政治や経済に関することじゃないってことですか?」 俺が適当に相づちを入れると、男は賢い生徒をほめる先生のように続けた。 「まさにその通りです。ご契約者様にとって今何の情報が欲しいのか、それを事前に察知して新聞に反映する。それが当社が経営するあなただけの新聞のシステムでございます」 「確かに面白そうだけど、それだと高いんじゃない?」 「まぁ、そうですね。仰る通り個人別で記事を作り変える必要がありますので、一般の新聞に比べると少し値段は張りますね。けれども、絶対に為になる情報が目白押しなのは補償いたします。とりあえず今回は初回ということで初刊発行のみ無料で差し上げますので、もし興味を引かれたら契約いただけませんか?」     
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