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そう言うと男は真新しい新聞を手渡してきたので、俺は言われるがままにペラペラとページをめくると、そこには一人暮らしの男性用のグッズや日用品の記事が載っていた。
「もちろん。ご希望いただければ明日にでもそのページに楽器関係の記事を加えることもできます」
「ふーん。確かに面白いけど、今のご時世、新聞に頼らなくてもインターネットがあればいくらでも調べられるからなぁ・・・」
やはり要らない。
そう判断して断りの返事を入れようとしたその時。
おざなりにページをめくる俺の手が、ある記事で止まった。
「あ?」
「どうかされました?」
「いや、この記事はなんすけど・・・」
俺は男に見えるように新聞を傾けた。
「ああ。そちらは証拠隠滅方法の記事ですね」
「いや、そうじゃなくて、なんでこんなのが俺の新聞に載ってんのって話だよ」
「もちろん。それは・・・あなたにとって必要な記事だからですよ・・・」
男のニヤついた顔が俺の時間を静かに止め、そして、再び動き出すころには額からは冷たい汗がしとどに流れる。
「別に気に病む必要はないと思いますよ。隣人との騒音トラブルが思わぬ方向に進んでしまうことはドラマの世界では定番ですから」
「あんた、何が目的だ?」
俺がどすの利いた声で問いかけると、さっきから気味の悪い笑みを浮かべていた営業マンは急に表情を無くした。
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