2 Dissonance

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 別の工場に異動させられることはよくあるし、ブラックスターの場合、ほとんどが一方通行の左遷だ。危険業務に回されたのかもしれない。  ミュウとは、もう会えないと思っていたが、思わぬところで再会した。 身寄りのないブラックスター副作用患者の引き取り手の募集広告に、彼女の写真とプロフィールが載っていたのだ。  引き取り手になれば、世話をする義務と引き換えに、一方的な意思で配偶者とし、その者の資産を受け取ることができる。ほかの引き取り手が見つかれば別だが、原則、一方的な意思で離婚することはできない。多くは、数年のうちに衰弱死や虐待死することが多いというが、介護施設が不足している現状から、制度は維持されていた。  六宇はすぐに引き取り手に名乗り出た。  彼女は七飯(ナナエ)という仮名で登録されていた。  副作用患者の配偶者募集の際に、本名などの個人情報登録は抹消される。本人の権利を国に移管するためだが、引き取りが決まれば、名前は配偶者の権利で再登録することができる。ミュウと登録し、一緒に暮らしはじめた。彼女名義のわずかな資産は、全額が補助人工知能の取り付け費用に消えた。 「エヴァ」     
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