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「その曲は多分、ダウンロードできないよ。あの手の古い楽曲は登録されてない。私は路上演奏者が歌ってるのを聴いて真似したの」
「そうか」
エヴァは六宇を見たあと、なにかを考えるように沈黙した。そして、意を決したように言った。
「歌を覚えていたってことは、それ以外の記憶もサルベージできるかもしれないんじゃない?」
「ああ、でも……今の装置じゃな」
「最新の廉価版が出ているかもしれないよ」
六宇は補助人工知能のレンタル料金表を思い出す。アップグレードする資金を用意するには、さらに仕事の危険度を上げねばならない。
「思い出さないほうがいい記憶もあるけどね」
エヴァは六宇の横顔に向かってそう言うと、席を立ち、楽屋のほうへ消えた。
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