3 Undercover

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3 Undercover

 エントランスで生体チェックを受けるところまでは、いつもと同じだった。その後、専用の連絡通路を通り、男女別の更衣室に向かう。  更衣室の壁際に横長のテーブルがあり、青いツナギの作業着がサイズ別で置いてあった。着替えると、脱いだ服とリュックをロッカーに入れた。  黙々と着替えている工員は、およそ三〇人。アングロサクソン系の白人が多い。ラテンやアラブ系もいる。およそ百人分のロッカーが並ぶ更衣室が広く感じる。更衣室には、個室トイレ、シャワー室、冷水器があるが、使う者はいない。  みな、表情は暗く、薬物中毒者のようにうつろな目をしている。後頭部を隠すために後ろ髪を伸ばしている者も多い。ばたん、ばたんと、ロッカーの小さな扉を閉める音が寂しげに響く。  自動ドアの上に緑色の文字で入口の表示があった。青装束の工員たちは、ふらふらと、ドアの向こうに吸い込まれていく。六宇は彼らの一番後ろについた。中には小部屋があり、白いツナギを着た監督員が二人いた。次の部屋には、一人ずつしか入れず、扉の前に列ができていた。     
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