3 Undercover

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 順番が来て、ハンディタイプの機器を後頭部にあてがわれた。記憶制御機能が起動される。ちゃんと作動するか不安だったが、無事、自動ドアが開き、中に入ることができた。  地下通路のような細い廊下だった。先に入った工員の姿は見えない。これはただの廊下ではなく、身体検査を兼ねている。検品され、選別されているのだ。  廊下の突当りの自動ドアが左右に開く。そこは窓のない部屋だった。正面に自動ドアが八つあり、いちばん左だけが開いている。そのドアの前の床面に矢印が光っていて、進入を促している。  入ると、背後で扉が閉まる。  また細い廊下を歩き、たどり着いた場所は半地下の駐車場だった。足音が反響し、照明が打ちっぱなしのコンクリートの壁を白く照らしている。護送車のような車両が三台停まっていた。監督員や、女性工員もいた。  車両の後方に開いた扉から、工員たちが男女混合で乗り込んでいく。六宇もほかの工員につづいて搭乗する。両隣と身体を接して、向い合わせに座る。  席がいっぱいになると扉が閉められた。窓はなく、天井の照明がうっすらと輝いている。生気のない労働者たちは一言も声を発しない。  やがて低い振動音がして、車は走り出す。     
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