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揺れは少ないが、どこを走っているかわからない不安があって、居心地が悪い。車は五分ほどで停車して、ぱかりと後ろの扉が開く。そこは、また屋内駐車場だった。薬品の匂いが鼻をついた。
降りると、待ち構えていた監督員から、白い錠剤と水の入った紙コップを手渡された。精神安定剤の類だろう。
「はい、飲んだらあっちのゲートから中に入ってね」
少し迷ったが、言われた通りに飲んだ。
ぞろぞろと列をなし、搬入口のような扉のない大きなゲートをくぐる。そこはまだ作業場ではなく、ミーティング用の部屋だった。
大画面ディスプレイの前で、今日の作業についてのビデオ説明を受けた。
映像はCGアニメーションだった。作業は単純で、各自ブースに入り、流れてくる兵士の死体から、その身体に埋め込まれたマイクロチップを専用の機材で取り出すというものだった。さっきの薬が効いているのか、ざわめき出す者も、目を背ける者もいなかった。
作業場に入るときに、専用ゴーグルと呼吸用保護具がついたマスクを渡され、装着する。
五〇メートル四方ほどの工場内部は、中央に高さ三メートル、幅三〇メートルほどの直方体の箱がある。中は、地下にある死体の貯蔵場所とコンベアでつながっている。
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