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開口部が閉じる。まるで地下鉄の自動扉のようだと思った。
再び赤くなったボタンを押す。また薄闇の向こうから死体が落ちてくる。
次は女だった。
チップは三つ。
まず、くるぶしと首の後ろに埋め込まれたチップを採取した。最後の一つは腹の奥にあり、吸引できなかった。人差し指でトリガーを引いたまま、親指で切開ボタンをオンにする。ノズルの先端が女の下腹にめり込み、ぎゅりぎゅりと肉の中を掘り進んでいく。やがて先端のセンサーがチップを捕らえ、切開が止まり、肉ごと吸引する。右手の上を、それまでより大きな塊が通り過ぎていくのを感じた。
おれはこの人に埋め込まれたよけいな異物を取り除いてやっているんだ――と、頭のなかで自分に言い聞かせる。
緑のボタンを押す。女は股を開いて性器を露わにし、開口部に落ちていった。抜け殻になった人間の生殖器は、どうしてあんなにも哀しく、グロテスクに見えるのだろう。
この仕事がブラックスターにふられる理由はよくわかる。今は平気だが、あとで思い出したとき、記憶を消したくなるだろうから。
十人の死体を処理したあと、タッチパネルに「休憩を三〇分取ってください」と表示された。
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