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祖母は理恩へ確かに言った。
“久しぶり”と。
「え……おばあちゃま、宝生くんと知り合い……?」
接点が全くなさそうなふたりを梢が交互に見ると、静かな笑みを浮かべている祖母とは反対に理恩は相変わらずの無表情だった。
「まあ上がりなさいな」
そう言って車椅子を反転させ、再び玄関の奥へ入っていった祖母の後を梢と理恩はついていった。
何故自宅へ理恩を迎え入れなければならないのか、と梢は若干不満気だったが、祖母が上がれというのなら逆らえない。
それに、タイミングよく玄関に現れたのは単なる偶然ではなく、祖母が梢たちがこの家に来ることを知っていたことも理解出来るだけに何か大切な話があるのだと思った。
「大きくなって。なん年ぶりだろうね」
梢の父はまだ仕事から帰宅しておらず、母の方に帰りが遅くなったことを詫びると祖母に呼ばれていることを伝えた。
祖母は理恩が来ることを知っていたが、母の方は突然娘が連れてきた男の子に少し驚いたようだった。後できちんと説明をしなければなるまい。
「あなたはもしかして――あの女の子のばあちゃん? どうして俺があの時の子だってわかったんだ?」
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