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「覚えててくれたんだね。あの時はちゃんとお礼も出来なかったからずっと心残りだったんだよ。ずっと探してた。理恩くんのオーラは特殊だからね。梢の近くにいればすぐにわかったよ。でも運命というのもはあるものね」
「どこかで梢を見たことがあると思ったら……ばあちゃん似なのか」
梢にはふたりの会話が全く見えてこない。
「どういうことなの?」
しびれを切らしたように梢がふたりへ問いかけると、祖母は「あんたは命の恩人のことも忘れてしまったのかい」と苦笑した。
「どういうこと?」
もう一度同じ言葉を発すると、祖母は昔を思い出すようにして目を細めた。
「まああの時の記憶はないだろうけどね。小さい頃、悪霊に取り憑かれて意識不明になったことがあるのは覚えてるかい?」
その時の事は断片的に記憶にあった。
幼い頃……確か幼稚園に上がったばかりの頃、青森の祖母の家へ家族で遊びに行った時のことだ。
梢が頷くと、祖母は続けた。
「少し目を離した隙に梢がいなくなってね。丁度運悪く私に仕事が入っていて、気づかなかったんだ。仕事を終えて騒ぎを聞いて見つけた時にはすでに取り憑かれていてね。私には手の施しようがなかった」
初めて聞く話しだった。
それに祖母ほどの力の持ち主が太刀打ち出来なかった悪霊に祟られたことを知り、梢は身体を震わせた。
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