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「どうにもならないと知りながら、意識のない梢を病院に連れていった……入院してから確か3日目だったか……この子と会ったんだよ」
「宝生くんが青森に?」
「ああ、俺も親戚の家が青森にあって、その時は叔父さんのお見舞いに行ったんだったかな」
祖母は頷くと懐かしそうに微笑んだ。
「“おばちゃん、この子に怖いオバケくっついてるよ”って突然言ってきたんだよ。しかも“そのまんまじゃ死んじゃうよ”ってね」
梢の脳裏に生意気そうなメガネの幼稚園児が再生された。
「この子が霊感が強いのはわかっていた。けど、幼い子どもに助けを求めることは私には出来なかったんだよ。下手をすれば今度はこの子が祟られてしまうと思うと何も言えなかった」
「そ、それで……?」
「“おばちゃん、僕にはオバケは見えるけど、声が聞こえないんだ。なんて言ってるか教えて”って言ってきた。私にはずっと悪霊の声が聞こえていた。“見えない”とね」
「ああ、思い出した。ま、そういうことだ。俺が除霊してやったんだよ。感謝しろ」
話を切り上げるように理恩が口を挟んできた。
「待って……。宝生くんの目が悪いのってまさか……」
「関係ねえよ。遅いし帰るわ」
腰を上げた理恩に、祖母はベッドの上で姿勢を正した。
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