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「あの時もそうやってなんでもないからって姿を消してしまった。本当はあの時、悪霊に視力を奪われたのだろう? 梢から離れることを条件に」
理恩はバツの悪そうな表情を浮かべた。
「別に命取られるよりマシだろ。それに全く見えないわけじゃない。このメガネがあれば見えるしな」
「なんていうか……私……」
「ああ、そういうの求めてねえから。久しぶりに会えてよかったよ、ばあちゃん」
「これだけの恩を受けておいて、さらにお願いするのは忍びないけど……梢を頼むよ」
理恩が帰った後、梢は自室のベッドに座り、暫くの間天井を見上げていた。
まさか、あの理恩が自分の命の恩人だったとは。あのクソダサい瓶底メガネに敬意を払わなければなるまい。
奪われた視力を取り戻す為にはどうしたらよいのだろうか。今、その悪霊はどこにいるのだろう。呪いを解く方法はあるのだろうか。
気づけば理恩のことばかりを考えていて、ずっと放ってあったスマホを見て目を見開いた。
周からの未読メッセージが5件と、不在着信が2件あったからだ。
彼氏だというのにすっかり存在を忘れていたことを反省し、梢はすぐに電話をかけた。
「も、もしもし! すみません、今気付いちゃって」
『忙しかった? ごめんね、何度もかけちゃって。メッセージは見た?』
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