06.相葉優花の記憶

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 周は誰も本気で好きじゃないと言っていたが、特定の彼女を作らないと有名な周だから、今まで一線を超えようとする人間がいなかっただけだろう。 「私……恨まれますね」  今日はいつもの中庭には行かず、隣接された大学の敷地内にある学食へ来ていた。ここの学食は付属大学とのカフェテリアと共有されていて規模が大きい。  梢はA定食の焼肉定食、周はB定食のオムライスをトレイに乗せて空いている窓際の丸テーブルへと置いた。 「そんなことないとは思うけど、何か言われたら教えてね。釘さしとくから」 「釘って……。ところで周先輩は大学はここへ?」 「うん、多分。外部は受けないかな。梢ちゃんは?」 「私も多分」 「じゃあ一緒に大学生活も送れるね」  梢の脳裏にお花畑が出現した。  イケメンで優しい彼氏とのキャンパスライフ。いい、すごくいい。 「この高校に頑張って入ってよかったです」 「俺もだよ。こんなに幸せな日が来るなんて想像もしなかったからね」  そう言って周はスプーンに乗せたオムライスを口に頬張った。 「お兄さんはあれからどうですか?」 「どうって?」  周はオムライスを咀嚼しながら、梢を見た。 「怒ってませんでした? ほら、宝生くんが失礼なこと言ったから」     
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