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「ああ、そうだね。沙耶香さんの霊が取り憑いてるなんて嘘だったんだろ? あれから一層兄ちゃんは怯えちゃって以前にも増して部屋から出てこなくなったよ」
「え……」
梢は箸を口に咥えながら右上に視線を動かした。
「もしよかったら、私が霊視しましょうか」
「梢ちゃんまでそんなこと言うの」
「いえ。沙耶香さんの霊とは一概に言えないから……精神的に弱ってる人には変なのが寄って来やすいんですよ。もしかしたらそういうのが悪さしてるのかも」
今の梢には僅かばかりの自信があった。
もし何かに憑依されても意識を保てるかもしれないという自信が。
「もしそうだったとしても、彼女にそんな危険なことさせられないよ」
「大丈夫ですよ。放っておいても勝手に憑依される人なんで」
それに梢はなんとかして尊とふたりきりで話
したかった。
あの家に理恩はもう入ることは出来ないだろうし、梢がやるしかないのだ。
「そういう問題じゃ……」
「やっぱり周先輩のお兄さんには元通り学校生活送ってもらいたいですし。周先輩だってそう思ってますよね」
「……そうだね」
視線をトレイに置かれたタンブラーへ落とす周に梢は僅かな違和感を感じた。
周は尊が学校に戻ることをよく思っていないのだろうか。
梢の脳裏に周の両親の姿が思い浮かんだ。
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