06.相葉優花の記憶

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 佐野の言葉に理恩は「犯人ならな。でももう時間がないんだ。犯人に殺されなかったとしても、どのみち野神沙耶香の怨霊に取り殺される人間が出るかもしれない。もうその日は近い」そう言って理恩は窓へ顔を向けた。空は雲ひとつない青空が小さな窓いっぱいに広がっているというのに、梢と理恩には黒い靄がこちらへと伸びてきているのが見えた。 「……わかった。やってみるわ」 「俺も近くにいるから。何があっても絶対に守ってやる」  数日前、同じ言葉を聞いても半信半疑だった。けれど、その昔、自分の命を本当に救ってくれたのが理恩と知った今は、彼がいれば無敵のような気さえするから不思議だ。  今まで散々胡散臭く見えていた瓶底メガネも自分の命と引き換えに犠牲になった証だと思えば……やはり胡散臭かった。 「じゃあ連休初日の木曜日に」  鬼が出るか蛇が出るか。  梢はもう一度、四角い空を見た。    
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