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07.告白
木曜の朝、アラームの音に梢は目を覚ました。
カーテンの隙間から零れる柔らかな陽の光が、今日が晴れであることを伝える。
「おはよう、梢。早いのね。どこか出かけるの?」
連休と言っても仕事のある父の為に母はすでに朝食をつくり終え、父の食べ終えた食器をキッチンで洗っていた。
「うん、遊びに行ってくる」
「ひょっとしてこの間連れてきた子と? 朝ごはん食べてから行くでしょ?」
「違うから! それより、おばあちゃまは?」
「違うの? それは残念。お母さん、さっき声掛けたらなんか集中してるみたいだったからそっとしておいたわよ」
「そっか」
梢がそう答えると、母は味噌汁の鍋に火をかけた。
ごくごく当たり前の日常だ。
けれど、これから起こるであろう非日常を思うと不安と緊張で昨晩はあまり眠ることが出来なかった。
小嶋尊が犯人ではないと信じる一方で、集めてきた情報が“彼”だと突きつける。
もし、小嶋尊が犯人だと認めたら――周は梢を恨むのだろう。
梢は周が好きだ。
外見は勿論だが、それよりも自分を犠牲にしてまで兄を思うその優しさに惹かれた。
だが、理恩の言う通り、犯罪に手を染めた兄を庇っているのなら、その優しさは間違いだ。
嫌われても、恨まれても、梢は正さなければならない。
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