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「こ、今度は何……」
尊は前回と同じようにしてベッドに座り、何かに怯えるようにして布団にくるまっていた。
「この子が兄ちゃんと話したいって」
梢は部屋の中を覗き見て、頭を下げた。
「こんにちは」
「君は……また来たのか」
どうやら、尊は梢のことを覚えているようだった。
それから、尊は伺うような視線で周を見た。
「大丈夫だよ、兄ちゃん。この子は俺の好きな子だから」
「……周の……?」
好きな子、と言われ梢の胸がキュンと音を立てたが咳払いをしてなんとか気持ちを落ち着かせる。
「じゃあ少しだけ」
「わかった。隣にいるからね」
そう言って周は尊の隣の部屋へと入っていった。それを見届けると、梢も周の部屋に入り、扉を静かに閉めた。
部屋の中は依然として乱雑だが、ゴミの類はないし、風呂にもきちんと入ってるのだろう、不潔な感じはしなかった。
梢はそろそろとベッドの横へ足を進めると、こちらを伺うようにして見ている尊へ、もう一度頭を下げた。
「改めまして。1年、小比類巻梢です」
「…………」
尊の痩せた瞳が揺らめく。
「あ、周は……」
「周先輩は部屋で待ってくれています」
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