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梢がそう言っても安心できないといったように、尊は巻き付けている布団を両手で強く掴んだ。
「あの、時間が余りないので単刀直入に聞きます! 尊先輩、相葉優花さんを知ってますか?」
「……え」
尊から掠れた声が漏れた。
「野神沙耶香さんの親友ですよね。実は私、優花さんと友達なんです」
「相葉さんと……君が……?」
ゆっくりと梢が頷くと、尊は「な、何か聞いてるの?」と小さな声で問いかけてきた。
「野神先輩には尊先輩以外に好きな人がいた。そう聞いてます」
「……!?」
「それと、野神先輩は誰かに脅迫されていた。彼女が持ち出した学校の金庫の鍵はその取引材料だったんじゃないですか?」
梢の言葉に尊はヒュウと喉を鳴らした。
「私はその相手が尊先輩だとは思っていません。思いたくないんです。だから知っていることを話してください」
「ぼ、僕は……」
尊が頭を抱えて泣き出した時、不意に背後の扉が開く音がした。
「周先輩……」
周は静かにこちらを眺めている。
それから、梢に向かって口を開いた。
「梢ちゃん……君はどこまで知ってるの?」
初めて見る周の冷たい表情に、梢は戦慄した。
「あ、周先輩。聞いてください! 私は……」
「心配するふりして尋問だなんて、梢ちゃんも人が悪いな」
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