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「違います! 本当に私はふたりを……野神沙耶香さんを救いたいんです!」
「どうだか。いいよ、全部教えてあげる」
そう言って、周は銀色に光る小さな金属を右手の親指と人差し指で摘んで持って見せた。
「……それ」
「梢ちゃんたちが探してる鍵だよ。兄ちゃんが持ってると色々と危ないからね。俺が持ってた。佐野たちも学校でなんか探してるみたいだったけど、これ探してたんでしょ?」
鍵がこの家にあるということは、やはり犯人は――尊。
この部屋は密室ではないが、中には尊、入り口には周が立っている。事実上密室と同じだ。逃げられない。
「そんな怯えなくても大丈夫だよ。これから学校に行こうか」
「が、学校?」
「全部教えてあげるって言ったでしょ?」
差し出された手を梢は固唾を飲んで見つめた。
***
「……アイツ、切りやがった」
理恩と黒猫に憑依している優花は小嶋家の屋根の上にいた。
周が梢との待ち合わせに家を出て行った直後の午前9時半からずっとだ。4月後半といえど日差しが辛い。昼過ぎにやっと帰ってきたかと思えば通話が繋がっているというのに堂々とラブシーンを繰り広げ、挙句に通話を切られた。
「すまん、優花。通話切られたから気づかれないように様子見てきてくれ」
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