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通話を切ると、理恩はダメ元で梢に電話をかけたが、機械的な音声が聞こえてくるだけで呼び出し音は鳴らない。
「優花のスマホ……」
理恩は優花のスマホを証拠品として持っていくように梢に言っていた。
「くっそ……間に合わねえ!」
蒲田の駅まで全力疾走すると丁度発車した電車の車窓から梢と周の姿を確認した。品川方面だ。
優花の母に、優花のスマホの位置検索を頼もうと思ったが、理恩の推理が正しければそんなことをしている間に梢は――。
その時、ホームで佇む理恩の目の前に突如として光の粒子が現れた。
「え……」
その光の粒は急速に集結し、人の形を造った。
「ばあちゃん!?」
それは梢の祖母だった。恐らく生き霊を飛ばしてきたのだろう。
「理恩くん、急いでおくれ。学校へ」
「学校……?」
「梢を頼む」
それだけ言うと再び梢の祖母の姿は光の粒となり跡形もなく拡散した。
***
「誰もいないね」
休日の学校は当たり前だが閑散としていた。
だが、梢にはわかる。
野神沙耶香の怨念が今や学校全体を覆うようにしている。
「あの……」
ここに来るまで、周はひと言も言葉を発しなかった。梢もまた何も口に出さずにいた。
「うん、心配しなくてもちゃんと話すから。まずは何から話そうかな」
そう言って周は旧校舎の方へ足を向けた。
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