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怨念の根源があるその場所へ近づくのは梢の身には堪えるのだが、周は何も感じないのかスタスタと歩みを進める。
「俺、中学に上がるまで母子家庭で育ったんだ」
「え……」
「母さんが付き合ってたヤツには家庭があったんだ。それを知らずに母さんは付き合ってて俺を妊娠した。その途端手のひらを返したようにそいつは母さんを捨てたんだ。許せないよな」
あまりの予想外の話に梢は息を飲んだ。
「それでも母さんは俺を産んで育ててくれた。ほとんど仕事でいなかったけど、幸せだったよ。でも、小学校を卒業してすぐに母さんは死んだよ。過労死ってヤツで」
とても悲しく辛い過去のはずなのに、周は淡々と続ける。
「その後、母さんの弟、今の父さんの家に引き取られた。今の母さんは世間体を気にする人だから俺みたいなのは受け入れたくなかったみたいだけどね。中学に上がった俺は荒れたよ。梢ちゃんが見たら引いちゃうかも」
旧校舎のエントランスを開けると、重苦しい空気が梢にのしかかった。咄嗟に梢はスカートのポケットに入れている祖母から譲り受けた数珠を握りしめた。
「で、でも更生したじゃないですか」
「せっかくここに入れたのにグレてたんじゃ退学になっちゃうでしょ」
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