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「そうですよ! ここに入るために……尊敬するお兄さんと同じこの学校に入る為に頑張ったんじゃないですか!」
「あはは! 梢ちゃんは本当に面白いなあ。俺が本当に兄ちゃんを尊敬してたと思う?」
不敵に笑う周に梢は全身が粟立つのを感じた。
「家でも学校でも優秀な兄ちゃんと比べられる。俺に居場所なんてなかったよ」
周は笑いながら階段を登っていく。
「そんな時、沙耶香と会ったんだ」
「え……?」
頭がガンガンと音を立てる。この人は何を言っているのだろうか。
野神沙耶香と会っていた?
梢の胸に不安が込み上げる。
「沙耶香は丁度受験を間近に控えていて、家でも学校でもいい子でいることに疲れていたんだ。そんな時に渋谷のゲーセンで会った」
渋谷。
周は渋谷が苦手だと言っていた。
だが、それはかつての遊び仲間がいる可能性があるから梢に知られたくなかったのだろうか。
「俺、見境なく女の子に手を出してたからね。沙耶香にも例外なく声をかけたよ」
少なからずショックだった。
荒れてしまった周の気持ちもわかる。けれど、あまりにも不誠実だ。
「他の子と同じように少し遊んだら捨てるはずだった。だけど、沙耶香は他の子と違って俺に説教してきたんだ。負けるなって。頑張って見返してやれってね」
呼吸が苦しい。
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