07.告白

19/19
前へ
/165ページ
次へ
 このひと言をこの人に出来れば言いたくなかった。けれど言わなければならない。 「どうして……沙耶香さんを殺したんですか?」  絞り出すようにして出した梢の声が屋上へ木霊した。 「沙耶香は鍵を持っていなかった。兄ちゃんに渡してたんだ。それに全てを告白していたよ。どうして……か。どうしてなんだろう。気づいたら沙耶香の身体を押していた。気づいたら沙耶香の身体は地面に落ちていて、気づいたら死んでた。どうしてかな、好きだったのに。ご丁寧にダイイングメッセージまで残してさ。消してやったけどね……」  周は、ブツブツと言葉を零しながら、焦点の合わない瞳に梢を映した。 「梢ちゃんも本当は兄ちゃんのことが好きなの? 最初から兄ちゃんに近づくために俺に近づいたんでしょ? 兄ちゃんは凄いよ。なんでも持ってる、なんでも持っていく」  言っていることが支離滅裂だ。 「そうか。だから俺は沙耶香を殺したんだ。兄ちゃんになんて……持って行かせない」  一歩、また一歩と周は梢に近づき、梢はじりじりと柵へと追いやられた。 「バイバイ、梢ちゃん」  数時間前、梢を抱きしめたその手が、今は梢を突き落とす為に彼女の肩へと触れた。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加