08.ゼロの体温

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 煙の中心部がだんだんと人の形を造る。  遺影に写っていた彼女とはあまりにも雰囲気がかけ離れているが、紛れもなく野神沙耶香、本人であった。  そしてその姿は梢の目にもはっきりと映っていた。 「宝生くん……視える、視えるよ!」  「何感動してんだ。構えとけ」 「う、うん!」  梢はポケットから数珠を取り出すと、左手へとかけた。緊張からか指先が震える。 「さ……沙耶香……!? お、おまえが悪いんだ! 俺を裏切るから!」  震える声を張り上げ、周は沙耶香から逃げようと必死に後退りをする。  ――うるさい、うるさい、うるさい……! 殺シた! おまえは私を殺シた! だから殺す……殺す……!  もはや怨霊となった沙耶香にはどんな言葉も届かないのだろう。 「ヤバイな。このままだと連れて行かれるぞ」  非常事態だというのに、相変わらず落ち着き払っている理恩に梢は「どうすんの!」と声を荒げた。 「まず話が出来る状態にしないと」 「だから、どうやって」 「優花!」  理恩が呼ぶと、黒猫はすぐに理恩の元へ駆け寄ってきた。 「優花を降ろせ。今のおまえなら出来るはずだ」 「そんなの今まで通り勝手に憑けば……」 「それだとおまえが乗っ取られるだけだろが。自分の意思で降ろせ」 「で、でも……どうやって……」 「早く! ばあちゃんをずっと見てたんだろが!」  そうだ。  梢は幼いころから祖母の交霊を間近で見てきた。 「……魂を……重ねる……!」     
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