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墨汁でも塗ったのか? と思わせるような黒髪はボサボサで、これまたメガネをかけているのだが、今どき見ない瓶底メガネ。小さな目からは表情が全く読めないからか薄気味悪い。
まあ、こんな胡散臭い部に入部をする人種なのだからまともな人間を求めるのが間違えているのだろうけれど、と梢は諦めのため息を吐いた。
「……あ、じゃあそっちからどうぞ」
梢がそう言うと彼は口を開くのも面倒くさそうに「1年2組、宝生理恩」とだけ声に出した。
「1年5組、小比類巻梢です。よろしくお願いします」
ニッコリと微笑むと、この場にいる男女の表情が惚けた。
梢は自他ともに認める美人なのである。
梢の母の実家は青森県にあり、東北の血を受け継いでいる梢の肌は白く、陶器のように美しかった。
目鼻立ちもまるで人の手に造られた人形のようで、誰も文句をつけられない完璧な美人なのだ。
そんな梢がアンダーグラウンド的存在であるオカルトミステリー研究部へ入部したのには理由があるのだが……。
新入部員2人の自己紹介が終わると、寂れた部室内に拍手の音が響いた。
「2人とも心霊経験は?」
梢が入部するまで紅一点だった副部長の神楽坂燕が興味津々と言った感じで身を乗り出してきた。
「経験はないですけど……【いる】か【いない】かはなんとなくわかります」
そう、梢には霊感がある。
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