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そう聞いて、梢の脳裏に小嶋尊の名前が浮かんだ。
「やっぱり……そうなの?」
交際相手に自殺と見せかけて殺されたとしたら、同じ女としてやはり怨むだろうと、梢は思った。
それと同時に悲しみが胸に湧き上がる。
「まだわかんねえけどな。なんかしら知ってる可能性はあると思う」
「……小嶋先輩も何か知ってるのかな」
今のところ、周と接していてわかったのは、恋人を亡くして変わってしまった兄の為に、どこか彼は遠慮をして生きているということだ。
明るくみえるその立ち振る舞いも、周囲を気遣って実は無理をしているのかもしれない。
「ホントに惚れた?」
口角を上げた理恩に、梢は顔を瞬時に真っ赤にさせた。
「なんでそうなるのよ!」
「俺には関係ないけど。でも本来の目的を忘れるなよ?」
「ご心配しなくてもモテすぎる男はタイプじゃないから」
「知らんがな」
いつかこの男をギャフンと言わせてやると、梢は心に誓った。
「あれからどうだ?」
2人で帰るつもりは毛頭ないが、帰り道が同じなので結局並んで校舎を後にした。
「あれから?」
「旧校舎で倒れてからだよ。何か変わったことはないか?」
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