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「そんなことやってたら、能力開花する前に取り殺されるかもしれねえぞ?」
「守んなさいよ」
「は?」
梢はポカンと口を開けた理恩をキッと睨んだ。
「霊能力者としては悔しいけど私より力があるのはわかる。あの場にいて正気でいられたことが何よりの証拠だわ。だけど、宝生くんには霊の声は聴こえないのよね? だったら私を使えばいい」
「梢に霊を憑依させて対話しろって?」
頷く梢に理恩は首を横に振った。
「その辺の浮遊霊ならいざ知らず、相手は怨霊だ。冗談じゃなく取り殺されるぞ」
「そうならないように事件の真相を探ってるんでしょ? それに最後は本人に聞くのが一番。生きてる人間は嘘をつく」
「……それはそうだな」
そう理恩が呟いた時、どこからともなく彼の足元に黒猫が擦り寄ってきた。
「ひっ!」
飛びあがらんばかりに驚いた梢は、咄嗟に理恩から離れた。
「なんだ、猫嫌いなのか?」
「嫌いじゃないけど、寧ろ好きだけど、黒猫はダメ!」
「記憶ないんじゃなかったか?」
「……なんの話?」
「コイツだけど。梢に憑依したヤツ」
黒猫が理恩の言葉に頷くようにミャーと鳴いた。
「え! 動物の霊だったの!?」
祖母が黒猫に用心しろと言ったのは、この猫に取り憑かれるという意味だったのだろうか。
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