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彼女が言う通り、画面には無数の光の粒が写り込んでいた。
「本当は鏡に何か映って欲しかったけど、これはこれで大収穫だな。幸先がいいぞ! 次、2階の理科室と音楽室に移動しよう」
理恩が危惧した通り、この校舎のいたるところに霊の存在を梢は肌で感じていた。
ただ、嫌な感じはしないので所謂悪霊の類ではなく、良霊と呼ばれるものなのだろう。
きっちりと元通りにカーテンを閉めると、サブ体育館を後にした。
扉を閉めた時、カーテンの裾が微かに揺れたことを誰も気づいていない。
カーテンに隠されたその鏡面に、何かが映りこんだ事も。
2階へと移動すると、理科室へと足を踏み入れた。
別に幽霊がいてもいなくても夜中の理科室というだけで充分不気味だ。
「歩いてない」
理科室を見渡して開口一番、大森の落胆した声が響いた。
人体模型は定位置から動くことなく、沈黙を守っている。
「写真を」
「はいはい」
意気消沈している部員たちを見ると、少しばかり可哀想に思えてくるのが不思議だ。
梢はそこかしこにいる霊体に少しくらい悪戯してくれてもいいよ、と心の中で呟いたのだが――。
「きゃあ!」
理科室で写真を数枚撮ってから移動した音楽室の扉を開けた瞬間、梢はそう叫んで扉へしがみついた。
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