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「みゃおん?」
愛らしく鳴き声を出す黒猫に、理恩以外の全員が、一気に表情を緩めた。
「なんだよ、猫かよ……」
「なかなか七不思議に出会えないな」
「残るは増える階段だけか。今の時期プールには入れないし」
「でも今回はオーブが撮れたし、今までよりも格段に内容の濃い部誌が作れるわ!」
黒猫は依然として理恩から離れない。
多分、中身はまた優花とかいう霊体なのだろう。
「ねえ、なんでその子いっつも宝生くんの傍に現れるの?」
他の部員たちが音楽室から出ていくと、梢は小声で理恩に問いかけた。
「懐かれてるって言ったろ」
「宝生くんは除霊が出来るのよね。成仏させてあげることも出来るんでしょ?」
「まあな」
「じゃあ早くしてあげたら? いつまでもこの世にいさせる意味がわからないんだけど」
「俺もそうしたいんだけどな」
理恩がそう言うと、黒猫は彼の後ろへと隠れた。
「……成仏したくないの?」
梢の言葉に黒猫は「ミャー」と鳴いた。
その瞬間、いつもの感覚が梢の身体を襲った。
「え……待って……」
頭を抱え始めた梢に理恩が「おい」と声をかけた時、一瞬ぐらりと梢の身体が揺れた。
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