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梢は意識を手放す瞬間、やはりこの黒猫には関わっていけないのだ、と思った。
だが、それ以降、梢の精神は眠り、代わりに優花が彼女の身体を支配した。
すると、それまで理恩から離れなかった黒猫は、何故自分がこんな場所にいるのか、としきりに辺りをキョロキョロと見回してから、脱兎のごとく逃げ出してしまった。
「またか」
「えへへー。成仏なんて冗談じゃないっての」
「おまえな……」
理恩がため息を吐いたところで、少し遠くから理恩たちを呼ぶ声が聞こえた。
「おーい! ふたりとも何してるんだ? 先に進むよー!」
「すぐ行きます」
「はいはーい! 何? 肝試しかなんか? ワクワクするねー!」
「だからおまえは喋るな!」
優花は頬を膨らませながら理恩の腕に自分の腕を絡ませようとしたが、巧みに躱されてしまった。
「理恩のケチ」
「送るぞ」
「鬼い!」
ふたりも他の部員たちと合流すると、一旦、3階の踊り場で歩みを止めた。
「噂によると、3階から4階へ続くこの階段の数が一段増えると言われている。皆、心の中で数えながら登ってくれ」
大森に言われて、誰が言うでもなく3年生から順番に一列に並んだ。
「12段……」
「俺も12段」
「私も」
その後何度か登り降りするものの、結局段数は増えていなかった。
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