03.生霊

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「ねえ、これ何やってんの?」  優花が小声で理恩に話しかけた。 「気にするな」 「めっちゃ気になるんだけど」  コソコソとふたりが話していると、神楽坂が「これにて調査は終了! 部室に戻りましょう」と声を上げた。  部室は5階にあるので、そのまま階段を登ろうとした時、突然何かが落ちる音が校舎に響き渡った。 「え、何?」 「教室から?」  大森と神楽坂は首を傾げて音のした方向へと、ゆっくり歩いて行った。佐野と田中もそれに続いていく。 「ねえ、理恩」 「ああ」  理恩と優花は顔を音のした方へ向けたまま会話を続けた。 「ちょっとヤバいんじゃない?」 「少し前までいなかったのに……」  小さく舌打ちを打つと、理恩は小走りで先頭を歩く大森たちに追いついた。 「そっちは何もいませんよ」 「え、でも物音が」 「何にもいないです。なあ? 梢」 「あ、うん! なーんにもいないでーす」  「ふたりがそう言うなら、いないのか」と納得した大森に「それより柏木先生が心配だから、そろそろ戻った方が」と理恩は言った。 「忘れてた!」  腕に嵌められたデジタル時計を見て、大森は「もう1時間経ってる!」と焦ってその場から踵を返した。     
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