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コンタクトレンズを外す前は、くっきりとした黒目であったが、裸眼の虹彩の色は、日本人のほとんどが持つという茶色よりもごく薄い――金色であった。
メガネを外したことで輪郭をなくした景色。反対にそれまで半透明に見えていた霊体の姿が実在するものと同じようにはっきりと理恩の目には映っていた。
理恩は音を立てず教室へ入ると、スーツ姿の男性に向かって「あんたには悪いけど、ここにいられたら困るんだ。返ってもらう」と声を発した。
ゆっくりと振り向いた男性は憔悴しきった顔をしていた。年齢は40代後半といった感じだろうか。
男性は理恩に何かを伝えようと必死に口を動かしているが、理恩には聞こえない。
「ごめん、俺には聞こえない」
そう言って、理恩はその金色の双眸で真っ直ぐに男性を捉えた。
「じゃあな」
そのひと言と共に、理恩の身体に目の色と同じ金色のオーラが出現した。教室内が眩い光に包まれていく。
「やば!」
扉に引っ付くようにしてその一部始終を見ていた優花がオーラから逃げるようにして扉から離れた。
圧倒的な霊力を持って強制的に霊を浄化する。これが理恩のやり方であった。
「もうメガネかけちゃうのー? 理恩の目、すんごい綺麗なのにー」
「ああ。素顔晒すとめんどくせえのが湧くからな。それにこのカラコン、度が入ってないからメガネないとなんも見えねえの」
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