58人が本棚に入れています
本棚に追加
「怒るなよ。っていうか、そこの教室に生霊らしいのがいたぞ」
梢の腕からゆっくりと手を離すと、理恩は1組の教室を指差した。
「は? 生霊?」
「リーマンぽいスーツ姿のオッサン」
「で、どうしたの?」
キョロキョロといえば周囲を見渡すも、梢にはなんの気配も感じなかった。
「俺が返した」
「え、あ、そう。解決済みなのね。って、他の皆は?」
「ああ、そうだ。梢がトイレに行きたいって言ってるからって、先に部室に戻ってもらってるんだった」
「は!? 私トイレに行ったの!?」
「そこかよ。行ってない。大森さんたちがいると厄介そうだったから適当に理由つけただけだ。行くぞ」
歩き出した理恩の後を、梢は釈然としないまま追いかけた。
部室に戻ると「小比類巻さん、トイレ遅かったね」と柏木に言われて、理恩を恨んだ。
この生霊らしきものが、野神沙耶香と深い関係にある事など、この時の理恩は想像もしていなかった。
***
「へえ、オーブ!」
翌週月曜日。
また木の上で聞き耳を立てられるのは嫌なので、梢は制服のポケットにスマホのボイスレコーダーを起動させて忍ばせ、中庭のベンチで周と昼食をとっていた。
今の話題は、金曜日に決行された“学校の七不思議ツアー”の結果についてである。
最初のコメントを投稿しよう!