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この学校の倍率が下がった理由を周が知らないはずはない。
「俺も同じだよ。皮肉だけど、あんな事があったから競争率が減って上位成績で合格出来たようなもんだし」
「……あの、他を受けようとは思わなかったんですか? いくら尊敬しているお兄さんと同じ学校だっていっても、何となく嫌じゃないですか。周りから有りもしないこと言われたりしそうだし」
交際相手である小嶋尊が直接手を下していないとしても、何らかの形で彼女の自殺の理由に関与している可能性が高いと当時の警察は睨んだはずだ。当然、弟である周も事情聴取は受けただろう。
入学試験直前の1月に起きた有名進学校での飛び降り自殺。
梢は連日のようにテレビのニュースでこの学校が報道されていたことを思い出した。
「他を受けることは全く考えてなかったよ。兄ちゃんがこの学校を目指した頃から俺の目標もこの学校だったし。それに確かに入試の時は警察が張り付いてたりして落ち着かなかったけど、入学する頃には自殺の原因が兄ちゃんじゃないって世間に公表された後だったから、誰に何を言われることもなかったしね」
「……そうですか。あの、小嶋先輩は野神沙耶香さんと面識はあったんですか?」
梢の質問に、周はパックのジュースを飲んでから答えた。
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