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「あるよ。よく家に遊びに来てたから。でもあんまり話したことは無かったかな」
その程度の関わりなら警察からもあまり深くは言及されなかったのだろう。
「もういい?」
そう聞かれて、梢は事件のことを深く聞きすぎたと焦った。これでは何かを探っているように思われてしまう。実際、探っているのだが。
「すみません。それより私、小嶋先輩の女友達から恨まれてませんか?」
「そんなことはないと思うけど、確かに付き合ってるのかどうかは聞かれるね」
そう聞かれるのも無理はない。
こうして、昼休みは毎日ふたりで一緒にいるのだから。
「なんて答えてるんですか?」
「まだだけど、時間の問題かなって答えてる」
「え!?」
梢の方から告白をしたのだから、ここは喜ぶべき場面だ。だが――
「そんな驚く?」
「だって、小嶋先輩はお兄さんの為に……」
「今まではね。でもそろそろ俺も自由になっていいのかなって思って。梢ちゃんは俺に一目惚れしてくれたって言ってくれたけど、実は俺もそうなのかもしんない」
そう言って悪戯っ子のような表情で周は笑った。
彼のようなタイプは好きにならないと決めている。
決めているのに、なんだろう、この胸のときめきは。
梢は思わず自分の胸へ手を当てた。ありえない程動悸が激しい。
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