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ここまで来ると、理恩のストーカーにさえ思えてくる。
この黒猫――優花のことも梢は不可解に思っていた。
理恩にまとわりついているようだが、取り憑いているわけでもない。そして、何故か毎度梢に憑依するのは一体何故なのだろう。
はっきり言って迷惑だ。
「あ」
黒猫を睨んでいると、何かに気づいたように顔を上げたので理恩が来たのだと悟った。
「ちょっと! 何スルーしようとしてんのよ!」
梢の真横を何事も無かったかのように通り過ぎた理恩へ彼女は叫んだ。が、周りの驚いた視線に身を縮ませ、理恩の腕を掴むと小走りで校舎の外へ出た。
「あ、悪い。そういや話があるんだっけ?」
頭がいいくせに鳥頭なのか、と梢は心の中で毒づいた。
「……ちょっと学校から離れたいんだけど」
「わかった。じゃあ駅前のカラオケにするか」
「ちょっと待って、その猫に着いてこないでって言って」
「ああ、はいはい。だってさ。ちゃんと約束は守るから」
理恩がそう言うと、黒猫は名残惜しそうにしてこの場を去っていった。
「約束?」
「こっちの話。行くぞ」
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